2023年4月の研究会(オンライン)のおしらせ

日本演劇学会 演劇と教育研究会
2023年4月研究会(オンライン)のお知らせ

日 程:4月23日(日)午後2時から
① 研究発表

■テーマ:英語コミュニケーション教育の理論と実際ーパフォーマンス学からのアプローチー

■報告者:大川道代(青山学院大学)

■主 旨

Shaffer (2016:p.1)はPerformance Studiesの学術研究の中核をなす領域はconspicuous aesthetic performanceであるとし、以下のように定義した:

“a distinct, rehearsed and staged performance, marked as art through stylistic choices.” 本発表では、この定義に基づき、conspicuous aesthetic performanceの創作から上演に至る過程を振り返り、その教育的価値を議論する。

先ず、文学的価値のある文学作品を朗読するオーラル・インタープリテーションからPerformance Studiesへと学際的、かつ包括的に移行したパラダイム・シフトを朗読題材と上演方法の観点から比較検証する。次にPerformance Studiesの一分野であるautoethnograpyによる英語コミュニケーション教育の実際を詳述する。最後に、Performance Studiesに基づく英語コミュニケーション教育を発展させ、普及していくための施策を提言する。この教授法は履修生の英語力のみならず、人間としての成長など数値化できない教育的効果があることを論証する。(大川道代)

引用文献

Shaffer, Tracy S. “Performance Tells It Slant.” Text and Performance Quarterly 36:1 (2016): 1-5.

② 検討会
■テーマ:演劇教育研究1990年以降30年間の成果をどのように概観するか

■報告者:中島裕昭、花家彩子(本研究会運営委員)
■主 旨
日本演劇学会に演劇と教育研究会が発足してから30年以上が経過したが、この30年の間に、演劇と教育の関係はさまざまな影響を受け、その都度議論の仕方も変化してきた。
研究会では、これまでの研究成果の確認・検証を試みている。これまでの研究成果は、その都度、複数の要因と文脈の中にあり、これを無視することはできないため、研究成果の確認・検証の作業には一定程度の方法的意識が必要である。そこで、今回は作業の前段階として、これまでの研究成果をどのように概観するか、その整理の方法と経過を報告する。(花家彩子)

■研究会の申し込み方法
参加を希望される方は以下のフォームに必要事項を記入の上お申し込みください。後日、ID/PWまたはURLをご連絡します。
https://forms.gle/b4jgUofCQH94k1rh8

■研究発表&実践報告の募集
演劇教育に関わる研究成果や実践の報告・発表を募集しています。口頭による報告・発表&質疑、60~90分程度。実施に際してはA4版2,3枚程度のレジュメ、またはパワーポイントの作成をお願いしています。ご希望の方は、E-mailで研究会宛ご連絡をお願いします。運営委員会で確認後、日程等のご相談をさせていただきます。

日本演劇学会分科会 演劇と教育研究会

 


4月研究会は、二本立てで行われました。
一つめは、青山学院大学の大川道代さんのご発表でした。テーマは「英語コミュニケーション教育の理論と実際―パフォーマンス学からのアプローチ―」。英語コミュニケーションの実践授業の報告を中心に、特にスピーチの学びを演劇的に発展させる工夫について紹介くださいました。
報告の前半は、文学的価値のある多様な作品を朗読するというオーラル・インタープリテーションの基本の説明の後、実際に学生が実話に基づいた日記を題材にした英語の台本を作成し、それを演劇作品として発表した様子を報告くださいました。後半は、学生の意欲を喚起し、演劇的な活動として発展させるための工夫として、参加学生が掴みやすい教材の選択や、語りやプレゼンテーション等の多様な表現形式も組み入れる形式の重要性を教えていただきました。
報告後の議論では、演じる側と見る側に対する評価の観点、学習の振り返りの方法、学生自身の個人的経験を表現する活動の意義や指導の難しさ、研究方法と先行研究の位置づけなどに話題が及びました。
二つめは、本研究会運営委員である中島裕昭さんと花家彩子さんが進行する検討会でした。テーマは「演劇教育研究1990年以降30年間の成果をどのように概観するか」。6月に大阪で行われる2023年度全国大会におけるパネルセッションを深めるための継続企画で、今回は、学位論文を中心に報告が行われました。具体的には、日本における演劇教育に関する学位論文の傾向の報告を中心に、研究の積み上げの難しさ、成果共有の枠組や研究方法の共有の必要性、自身が行う実践を扱う研究の意義と課題でした。
報告後の議論では、関連用語の統一がなされていない点、演劇教育学が未確立な点、制度論の検討などに話題が及びました。
研究会の今後の方向性についても議論が及びました。演劇と教育の在り方を今後もいろいろな角度から考えていきたいと思います。皆さまお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございました。(運営委員:山本直樹)